企業と従業員において締結する36協定ですが、FC加盟店とチェーン本部においても36協定を結べる可能性があります。この記事では、36協定とは何かを解説し、実際のフランチャイズにおける法律違反事例を紹介します。
1日8時間(週40時間)という法定労働時間と週1日を休日とする法定休日が、労働基準法で定められています。36(さぶろく)協定とは、それを超えての労働、または休日労働をさせる場合「第36条に基づく労使協定を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出なければならない」と決められていること。
この対象は「労働者」であり、正社員だけでなくパート・アルバイト・契約社員なども該当します。また労働基準法によると「管理監督者」ではない立場の人を「労働者」と指していることから、「管理職」と「管理監督者」を各企業で明確に定義しておく必要があります。
36協定を締結するとき、難しいのはFC加盟店が「労働者」にあたるかどうかということです。実際に、コンビニエンスストアでFC加盟店も「労働者である」と認められた判決があるので紹介します。
申立人となったのは、コンビニエンスストアのフランチャイズ加盟店契約を締結している加盟者により構成される組合。大手コンビニエンスストアが、団交のルール作りなどを協議事項とする申し入れに応じなかったことは不当労働行為であるとして、申し立てられました。
結論として県労委は、大手コンビニに対し団交応諾と文書手交を命じました。
この判断のポイントは、大手コンビニと加盟店主が締結した契約がフランチャイズ契約であったこと。フランチャイズ契約は、フランチャイザーと加盟店とがそれぞれに独立した事業者として締結するものであり、加盟店は社員として雇用されるものではない「独立した事業者」です。
ところが、加盟店は事業者であっても相手方との交渉力には格差があり、契約自由の原則を貫徹すると不当な結果が生じるため、労働組合を組織して保護されるべきだと主張。
加盟店主が独立した事業者であっても、それが労働者性を否定する理由にはならないとし、総合的・実質的に判断して、FC加盟店も「労働者」として認められました。
2017年度に東京労働局が管下の労働基準監督署で実施したフランチャイズ経営のコンビニエンスストアへ監督指導をしました。
監督実施事業場数は269に対し、違反事業場数は257。これは全体の95.5%にあたり、大手コンビニフランチャイザーのほとんどが労働基準法に違反していたというのです。
主な違反事項は、36協定を締結せずに時間外労働をさせていたもの、そして36協定で定める限度時間を超えて労働させていたものとなっています。
独占禁止法とは、公正で自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断によって自由に活動できるようにすること。つまり事業者は、自らの考えによって安く優れた商品を選択・提供して売上を伸ばそうとすることができるという法律です。
しかしながら、コンビニ本部による加盟店募集時の説明が十分でなく、虚偽や誇大な情報によって実際のFCシステムよりも優良、有利と思わせ、競争者の顧客を自己と取引するよう誘引するケースが多くみられます。
2020年に公正取引委員会が公表した調査結果では、「予想売上や予想収益額に関する説明が、加盟前に受けた説明よりも実際の状況が悪かった」と答えた加盟者が41.1%にも及びました。
差異が生じた理由は、来店客数の過大見積もり、人件費の過少見積もり、廃棄ロス、棚卸しロスなどの過小見積もりによるものです。
2020年、愛知県の小売業のフランチャイズ加盟店と、同社で複数の店舗管理をしていた統括店長を、従業員に36協定を超えた時間外労働を行わせたとして名古屋地検岡崎支部に書類送検されました。
36協定では、月45時間での締結でしたが、時間外労働は最長で月126時間にも及びました。
また、商業などの従業員10人未満の事業場にも、認められている週44時間を超えていた疑いでも送致されています。
大手コンビニで2012年4月から2014年6月までの給料が未払いだった従業員が、月平均284時間以上の過労死ラインを超えた労働をしていたとして店舗を巡回する本部社員に相談。FC契約書には「オーナーは本部の指導のもと、労働基準法や労働安全衛生法などを遵守する」と書かれていましたが、この従業員の相談を受けた本部はオーナーを指導しませんでした。
そこで従業員は法的措置をとり、和解が成立しています。その結果、和解条項には本部が加盟店従業員の労働環境について指導すに務める旨も盛り込まれました。
本部は直接雇用関係のない加盟店の従業員の36協定や賃金未払いについても、責任をもって解決することを表しており、大変重要な事例となっています。